この記事は、渡部昇一著『読む年表 日本史』の読書ノートです。
今回は
第1章 古代篇 神武東征
です。
要点
- 神武東征は、九州から大和(現奈良県内)まで制圧するまでの話
- 河内(現大阪府内)の豪族ナガスネヒコと激戦に
- 八咫烏や金色の鵄(とび)の助けもありナガスネヒコを撃破、大和朝廷を樹立
解説
神武東征とは、初代天皇である神武天皇が、当時の日本を制圧して天皇に即位するまでの逸話のことです。
東征というくらいですから、東へ東へ進んでいったわけですね。ただしまっすぐ東を目指したわけでもなく、各地に立ち寄り平定していったようです。
東征というと、世界史好きの人ならアレキサンダー大王の東征を連想するかもしれません。
さて、神武東征のスタート地点はどこだったかというと、日向国(現宮崎県)と言われています。そこから北九州、瀬戸内海を通って大和(現奈良県内)を目指します。10年近くかかりましたが大きな抵抗はなかった模様で、多くの土着の人々は天皇に従ったようです。
しかし、河内(現大阪府内)で、土着の豪族長髄彦(ナガスネヒコ)という強力な勢力と衝突します。
このナガスネヒコというのは、実は天孫降臨のニニギノミコトの兄弟である饒速日命(ニギハヤヒノミコト)に仕える者だったと言われています。いわばニギハヤヒノミコトが親分で、ナガスネヒコが子分みたいな関係ですね。ニギハヤヒノミコトは、ナガスネヒコの妹と結婚しています。
このことから渡部氏は、次のように推察しています。
- 天孫降臨族は、いくつかの集団が日本に渡っていた
- 河内あたりに渡った一族の者が、土着の豪族(ナガスネヒコ)と結婚した
ナガスネヒコは強敵だったようで、神武天皇は苦戦を強いられます。そして、ふとこんなことを考えます。
自分は天照大神、つまりは太陽の神の子孫だ。そんな自分が日に向かって進んでいるのは天道に逆らっている。太陽を背に背負う形で戦うべきだ。
そこでいったん紀州へ向かい、西に向かう形で大和へ進軍します。
熊野から大和へ向かうときに、八咫烏という大きなカラスが道案内してくれたという有名な逸話があります。八咫烏は日本サッカーのシンボルマークとしても有名ですね。
この八咫烏、実際には土着の人間が道案内してくれたものだと思われます。
そしてついに、ナガスネヒコとの決戦のとき、金色の不思議な鵄が飛んできて、神武天皇の弓の先にとまりました。鵄は稲妻のような強烈な光をはなち、そのせいでナガスネヒコ軍は目がくらみ戦えなくなってしまいました。
明治以来、軍人に与えられる最高勲章である金鵄勲章は、この神話の逸話がルーツとなっています。
ナガスネヒコ軍を破った神武天皇でしたが、ナガスネヒコは改心しなかった、つまりは服従しなかったためニギハヤヒノミコトに殺されてしまいます。ニギハヤヒノミコトは神武天皇に帰順、そしてその子孫が後の物部氏となります。
所感
神武天皇は実在の人物ではなかった、という説が学説上は有力なようです。ただ、神武東征に描かれているような出来事は実際にあったのだと思われます。
物部氏といえば、大化の改新のときに蘇我氏と争って破れた一族です。そんな歴史上の一族の祖先のルーツが、神話のあるというのはとてもロマンを感じますね。