日本史 読書ノート

新井白石の幕政登用/天皇家の未来を洞察した白石の功績

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この記事は、渡部昇一著『読む年表 日本の歴史』の読書ノートです。

今回は
第4章 江戸篇
新井白石の幕政登用
(1709年/宝永6年)
です。

要点

  • 6代将軍家宣のとき、幕政に重用され政治を補佐した
  • 皇統断絶を防ぐため、白石の提案によって閑院宮家が創設される
  • 閑院宮家は、現在の皇室の直系

解説

新井白石は、江戸時代中期の政治家・儒学者で、6代将軍家宣、7代将軍家継に仕え政治を補佐しました。家柄は高くなく、一介の無役の旗本でしたがその才能を認められ幕政を実質的に主導する立場にまで登りつめました。

この章で渡部氏は、新井白石の政治的な功績ではなく、天皇と将軍の関係に対する白石の考え方、また天皇家の将来に対する大きな功績を取り上げています。

まず、天皇と将軍の関係についてですが、白石は当時、朝鮮通信使との外交文書で徳川将軍の肩書を「大君」から「国王」に改めさせました。それは「皇は天に係るから天皇と称し、王は国に係るから国王と称するのである」という意識からでした。

また、「将軍も朝臣であり、将軍の家来も朝臣ということになっているが、これでは家来は将軍を尊ぶ理由がなくなってしまう。公卿以外はみな将軍の家来であるということにすれば、将軍に対し官軍の名を用いて反抗する大名はいなくなる」という考えを持っていました。もしこの考え方が幕府に採用され制度改革されていれば、幕末になって尊王倒幕派の大名はあらわれなかっただろうと渡部氏は推察しています。

さらに、白石は天皇家に対して大きな功績があります。それは、現在の皇室につながる閑院宮家を創設した点です。当時の将軍は綱吉、家宣と2代続いて養子が将軍に就きました。つまり2代にわたって世継ぎが生まれなかった。白石は、皇室でも同様のことが起こり得るのではないかと危惧し、跡継ぎの資格を持つ宮家を作っておいたほうがよいと考えたわけです。

皇統断絶の問題は、現在の問題でもあります。むしろ現在のほうが深刻かもしれません。今の時代に即しつつも皇室の伝統をこれからも守っていくために、藩屏になるものを作って行く必要があるのではないでしょうか。

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