日本史 読書ノート

天照大神と素戔鳴尊の誓約|『読む年表 日本の歴史』読書ノート

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この記事は、渡部昇一著『読む年表 日本史』の読書ノートです。

今回は
第1章 古代篇 天照大神と素戔鳴尊の誓約
です。

要点

  • 男女神イザナギとイザナミから、アマテラスとスサノオが生まれた
  • アマテラスの孫が、天孫降臨したニニギノミコト
  • ニニギノミコトのひ孫が、初代天皇の神武天皇
  • 日本の神話は、古代日本の勢力の変遷を表している

解説

『読む年表 日本の歴史』の最初のテーマは日本の神話の話です。その物語は、日本最古の歴史書である『古事記』『日本書紀』(併せて記紀と呼んだりします)に書かれています。

まず最初に、神々の漢字とフリガナを並べておきます。というのも現代の日本人にとって、漢字だけみても全く読み方が分からないからです。

・伊奘諾尊(イザナギノミコト)
・伊奘冉尊(イザナギノミコト)
・天照大神(アマテラスオオミカミ)
・素戔鳴尊(スサノオノミコト)
・瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)

ほかにも数えきれないほどの神々が記紀には登場しますが(まさに八百万の神!)、最重要な神々としてまずは上記を覚えておきたいものです。そして本記事では分かりやすいようにカナ名かつ略称で記述します。

記紀には神代という、その名の通り神話の時代に関する記述があります。神代によると、数々の神々が誕生し、最後に生まれたのが男女神であるイザナギ・イザナミの二神と書かれています。

イザナギ・イザナミは三人の神様を生みました。それがアマテラスとツクヨミとスサノオです。ツクヨミはほとんど登場の機会がない、ちょっと影の薄い神様です。

イザナギ・イザナミの子であるスサノオは、非常に気性が荒い神様でした。そのエピソードのひとつとして有名なのが、神殿に糞を撒き散らした、というものがあります。神話なのに品がない・・・。でもなんだか笑っちゃいますね。子供かと(笑)

そんなスサノオを姉のアマテラスはずっとかばい続ける(優しい!)のですが、とうとうそれも我慢の限界、「弟がやってくるのは善い心からではなく、国を奪おうとしているのだろう」と疑い出します。

身の潔白を示そうとしたスサノオは、「誓約(うけい)」を申し出ます。誓約とは一種の結婚みたいなもので、アマテラスとスサノオは"互いに"子供を生むことを提案。そしてスサノオから生まれたのが男の子であれば、自分の心は清いことを示すものだと訴えました。

なんで男の子だったら潔白なのか?という疑問はひとまず置いておきまして・・・。

誓約の結果、アマテラスは三人の女の子を、スサノオは5にの男の子を生みます。つまりスサノオの身の潔白は証明されたわけですね。そして生まれた子供は男の子をアマテラスが、女の子をスサノオが引き取ります。

ただ、その後結局素行の悪いスサノオは高天原(たかまがはら)という天上界を追放されてしまいます。

渡辺氏はこの流れをもって、「天照大神の天孫降臨系(大和族)と素戔鳴尊の出雲系(出雲族)に分かれたと考えられる」と分析しています。

アマテラスが引き取った男の子の元に生まれた、ニニギノミコト(アマテラスの孫)は、天上界である高天原から地上に降臨します。これが天孫降臨と言われるものです。天(アマテラス)の孫(ニニギノミコト)が降り立った、という意味ですね。

天孫降臨を現実世界に当てはめると、天孫降臨系の勢力が日本に到来し支配を強めていった、ということになると思われます。

そしてニニギノミコトは木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメ)という娘と結婚します。ちなみにコノハナサクヤヒメという名前、語呂が良く響きもよく、僕は好きです。

コノハナサクヤヒメは大山祇神(オオヤマツミノカミ)という、恐らく元々日本に住んでいた先住民の長と考えられています。

他にも天孫降臨系の神々は、日本の土着の長の娘と結婚します。つまりはその勢力をぐんぐん伸ばしていったということです。

そしてアマテラスから数えて6代目に当たるのが、日本の初代天皇である神武天皇なのです。

神武天皇は別名、神日本磐余彦天皇(カムヤマトイワレビコホホデミノスメラミコト)とも言います。・・・・長っ!

所感

神道では、天照大神が最高神とされています。神社に行くと御札が売っていますが、どの神社にも必ずあるのが天照大神の御札です。

でも、神話では天照大神が最初の神ではありません。なぜ、生みの親であるイザナギ・イザナミが最高神の扱いになっていないのか?更に言うと、イザナギ・イザナミよりも前にも神々がいて、一番最初の神は天之御中主神(アメノミナカヌシ)と言います。これらの神ではなく天照大神が主神なのか、興味深いです。

また、天皇は神武天皇から今上天皇に至るまで、男系男子の皇統を守ってきました。この男系男子による継承について、最近では女性差別だとの指摘が、国連女子差別撤廃委員会からされましたが全くの見当違いな指摘です。

それはさておき、、、

男系を重んじているのに、アマテラスは女神です。誓約の結果生んだのもスサノオなわけで、そう考えるとスサノオの子孫、という言い方をしてもいいような気がするのですが、なぜなのでしょうか?男子を引き取ったのがアマテラスだったので、生みの親より育ての親ということなのでしょうかね?こちらももっと深掘りして知りたい点です。

また、古事記や日本書紀の話は、架空の話であるものの、その背景には当時の情勢をもとにしていると考えられています。当時の情勢や政治状況を踏まえながら、あるいは編纂者の権力強化のため、神話の物語を創ったのだろうと想像するのもまた楽しいものです。

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